なんとなく風子
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☆ひみつのよしのさん☆
『捕らぬタヌキの?』
朋也「そう言えば祐介さん」
芳野「ん? なんだ?」
朋也「祐介さんって煙草吸いませんよね」
芳野「ああ、そう言えば一度も吸った事無いな」
朋也「へ〜。高校の時とかミュージシャンやってた時もですか?」
芳野「ああ」
朋也「やっぱり喉を痛めるとかそういった理由で?」
芳野「いや……」

芳野「公子さんが、嫌がりそうだろ?」

朋也「そんな時代から……」



『それが生き甲斐』
芳野「そう言うお前も煙草吸わないよな」
朋也「ええ、まぁ」
朋也「でも俺は一時期吸ってましたよ」
芳野「そうなのか?」
朋也「最近は全然ですけどね」
芳野「やっぱり風子が嫌がるからか?」
朋也「はは、まさか……」

朋也「風子が嫌がるなら俺は全力で吸いますよ」

芳野「岡崎……お前……」



『大好きだから……』
朋也「そう言えば祐介さんって好き嫌い無いですよね」
芳野「いや、そんな事無いぞ」
朋也「あれ? でも公子さんの料理も全部美味しそうに食べてるじゃないですか」
芳野「あの人は料理が上手いからな」
朋也「まぁ、そうですけど」
朋也「でも、なら何が嫌いなんですか?」
芳野「そうだな……」

芳野「タコさんウインナー」

朋也「……」

芳野「ああ、あとウサギさんのリンゴも」

朋也「……子供っぽいの苦手なんですか?」
芳野「いや……」

芳野「あんな可愛らしいのを食べるなんて可哀想じゃないかっ!」
芳野「もしかしてお前はタコさんやウサギさんを貪るように食べるのかっ!? お前は鬼かっ!」

朋也「いや、そんな親の仇を見るような目で見なくとも……」



『言い分』
芳野「昔々あるところに一人の旅人がいたんだ」
芳野「その人は長い長い旅の間にとても疲れていた」
芳野「そしてある時森に入ったところで空腹のあまり遂に倒れるんだ」
芳野「『ああ私はもうだめだ』」
芳野「『ここで死んでしまうのか』」
芳野「旅人がそう思った時一匹の兔が通りかかったんだ」
芳野「優しいウサギは旅人の事をとても可愛そうに思ってなんとか助けようと思うんだ」
芳野「旅人を温めるために枯れ木を集めて火を焚いたり」
芳野「川から革袋に自分の体重程ある水を運んできたり」
芳野「でも、空腹で倒れている旅人はなかなか元気にならない」
芳野「だから最後は自分から焚き火の中に飛び込み、自分の丸焼きを旅人のために用意するんだ」
朋也「はぁ、そうなんすか……」

芳野「ウサギは……ウサギは……くっ」
朋也(マジ泣きっ!?)
芳野「なっ!」
朋也(しかも力強く同意を求められてるーっ!?)



『待ち人きたれり』

風子「お待たせしましたっ」
公子「ごめんなさい、手間取ってしまって」
芳野「ああ、ぐすっ。別にそんなに待ってないからっく」
朋也「芳野さんと話してたし……」
公子「あの大丈夫? なにかゆう君泣いてるけど……」
風子「岡崎さんもなんかつかれきった顔してます」
二人『いや、ちょっと話が盛り上がっただけだから……』
後書き
【2006/01/20 14:23】 台詞劇場 | トラックバック(0) | コメント(2) |
1月1日
「まっくらですっ」
 びしっと水平線の方を指差し空と海の黒さを主張する風子。
「んーまだ、3時ぐらいだな」
 とりあえず俺は時計を見ながら時間を教えてやる。
「風が冷たいですっ。というか痛いですっ」
「まぁ、風を遮るところがないしな」
 轟々と海辺を流れる浜風は強く。
 冬の寒さも相まってその威力は凄まじい。
 また、海の上を渡ってくるせいか、潮の匂いと共にどこか重たい感じがする。
「岡崎さん……」
「んー?」
「これが生きている痛みなのでしょうか?」
 風子が突然まじめくさった顔で言う。
 とりあえず、無言でこづいておく。
 痛いですっとか言っていたがそれは無視しておいた。
「お日様はもうそろそろ昇りますか?」
「いや、まだまだだろ」
「でも、もう五時間ぐらい経ちました」
「まだ五分しか経ってない……というか五時間も経ったら太陽完全に昇ってるからさ」
 風子の相手をしつつ身をかがめるようにコートの前をぎゅっと締める。
 少しだけ暖かくなったような気がしたがやはり寒い。
「なぁ、やっぱり家に帰って見ることにしないか? すげー寒いんだけど」
「いやですっ」
「即答かよ……」
 てっきり、さっきのやりとりからもう待つのに飽きたと思ったんだが甘かったようだ。
 なかなか風子もがんばるな。
「初日の出を見るのが風子の昔からの夢だったんですっ」
 まぁ、その風子の夢を叶えるために神社から、わざわざちょっと離れた海岸までいどうしてきたんだが。
 でも、
「その割には今までがーがー寝てたんだろ」
「はい」
「そこも即答かよっ。つーか勝ち誇ったような顔でこっちを見るな」
 そうは言いつつも思わず笑ってしまう。
 なんとなく風子はやっぱり風子だと納得してしまったからかもしれない。
「でも、海岸から見る初日の出は絶対綺麗に違いありません」
「そうかもしれないが、その前に俺凍え死ぬかもしれない」
 半ば本気でそんなことを言ってみる。
「大丈夫ですっ」
「何を根拠に?」
「いえ、特に根拠とかは無いですが」
「頼むから、もう少し考えを持って発言してくれ」
 完全にこいつ感覚だけでしゃべってるな……
 というか何時もよりテンションが高い気がする。
 もしかしたら初の徹夜で多少テンションが高くなってるのだろうか?
「それは恐ろしい……」
「なにがですか?」
「いや、なんでも」
 とりあえず、ぽふぽふと風子の頭を撫でてやる。
 多少嫌がったが、結局されるがままだった。
 その後、暫くそんな風に時間を潰していたが、一時間ぐらい経った辺りでまた風子が騒ぎ出す。
「全然お日様が昇ってきません」
「そりゃ、まだ4時だからな……」
 確か日の出は6時ぐらいだったはずだ。
 あと、2時間近くこんな寒い中待つのかと思うとうんざりする。
「岡崎さん……」
「ん?」
「もしかしたらこのまま太陽が昇らないって事はありませんか?」
「……んな、わけないだろ」
 凄く心配そうな顔で聞いてくる風子に、俺は少々疲れを感じる。
「でも、このまま太陽が昇らなかったら大変です」
「まぁ、そりゃそうだな」
 地球の自転が止まってるわけだし。
「年賀状を『明けませんでしたがおめでとう御座います』にしないといけなくなります」
「お前の大変はその程度か……つーか、年はもう4時間程まえに明けてるからさ」
「そうですか……残念です」
「いや、残念がるなよ」
 こいつ本当に初日の出が見たいのだろうか?
 なんとなく訝しげに風子の表情を伺うが、何時もどおり一人で百面相をしていた。
 こりゃ、また変なこと考えてるな。
「ところで岡崎さん」
「はいはい、今度は何だ」
「実はお日様が昇らないのはフェイントで西から昇って来るという事はないでしょうか?」
「なんの為のフェイントだよ……」
 というかそれだと地球が逆回転してることになるのだが。
「でもそうなったら大変です」
「まぁ、そりゃそうだな」
「年賀状を『それでいいのだおめでとう御座います』にしないといけなくなります」
「いや、その状況の何がいいのかわからないからさ……というかまた年賀状かよ」
「実は風子今年の年賀状の干支を間違えてたことに先程気付きました……」
「つまり、年賀状を書き直したいしたいわけだな」
 こいつはたかだか年賀状のためにこいつは地球規模の大災害を願ってるのか。
 恐ろしい奴だ
「間違えて干支にイグアナを書いてしまいました」
「お前時としてすっげーミラクル起こすよな」
 どうやったらそんな間違いを起こすんだろう。
「でも、イグアナ凄く可愛いですっ」
「お前、絶対わざとだろ」
 ……こいつはどこまで本気なのだろうか?
 いや、どうせ風子のことだから全部本気なのだろうが……
 素で矛盾出来る奴なんて広い世の中でこいつぐらいのものだろう。
「はっ」
 突然、風子が短い声を上げる。
 というか声を上げたかと思うと、既に海に向かって走り出している。
「おい、風子っ!」
 慌てて呼び止めるが、止まるそぶりも見せずそのまま海に突っ込む風子。
 びしゃんと水しぶきが上がる。
「なにやってるんだお前」
 俺は風子の元へあわてて駆け寄る。
「見てくださいっ」
 波打ち際でかがんでいた風子はざばんと海から何かを引き上げる。
「初ヒトデですっ」
 そこには星形のうねうねと動く物体がいた。
「おまえ、そんなものの為に真冬の海につっこむなよ」
 死ぬ程びっくりして損した気分だ。
「そんな物とは失礼です。とってもかわいいです。ヒトデの中でもかなりの美形です」
「あーそうかよ」
 とりあえず、熱く語っている風子をずりずりと引きずり海岸から離れる。
「このヒトデは風子に新年の挨拶をしにきてくれたに違いありません」
「そりゃ、自意識過剰だ」
「きっと、待っていれば他のヒトデ達も挨拶しに来てくれるはずです」
「期待するだけ無駄だと思うぞ」
「どうしましょう。そうなったらニューイヤーパーティーを開かなくてはいけません」
「それ色んな意味でやりすぎだからさ」
「きっと今年はいい年になります。たとえば……」
 そこまで言って急に喋らなくなる風子。
「ほわ〜」
 振り返ってみると引きずられて居るまま遠い世界に旅立っていた。
「……」
 とりあえず、死なれても困るので無言でヒトデを海岸に投げ捨てる。
「さてと、こいつはどうするか」
 キラキラと幸せそうな表情で動かない風子を前にしばし考える。
「……まぁ、濡れてるまま放置して風邪ひかれても困るしな」
 なんとなく口をついてでるそんな独り言。
 自分で言っておいて妙にばつの悪い思いになりながらも、風子をガバッと自分のコートの中へと導く。
 まぁ、中で覆い被さるようにだきしめてるのだけど。
「……微妙に冷たい」
 濡れてるせいだろう。
 まぁ、でも風子自体はわりと暖かい。
 子供は体温高いって言うしな。
「……」
 ぼーっと水平線を見つめる。
 まだ、朝日は昇らない。
 もうしばらく、このままでいる必要がありそうだ。
 ふと
「今年は少しはいい年になるかもなぁ……」
 そんなことを考えて、少しだけ腕の力を強くした。



「で、結局こうなるのか……」
 背中にぐーすか眠る風子を背負いつつ、朝の町を歩く。
 あの後、風子は遠い世界から帰ってくる前に人のコートの中で別の世界へ旅立っていた。
 一応、太陽が昇ってくる辺りで起こそうとしてみたのだが、全然起きる気配を見せず、結局俺だけ初日の出を見ることになったし。
「はぁ、なんだかんだいって今年もこんなんか」
 そう言ってふとある言葉を思い出す。
「一年の計は元旦にあり……か」
 ……今年もがんばろ。
後書き
【2006/01/01 12:40】 台詞劇場 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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