ペイント・イット・ブラック
自宅事務所にファックスを導入した。
実に今更の買い物である。清水義範が「これぞ文明利器の極み」と大絶賛していたのも、10年以上も前の話だ。今や、パソコンとスキャナーとEメールさえありゃあ充分なのである。そっちの方が綺麗だし、簡単だし、早いし、何しろタダときた。
とはいえ、俺の顧客は中小企業のおっちゃん・おばちゃん・オカマばかりなので、ファックスも時どき必要になる。と、ちゃんと購入理由を説明しとかないといけないのはどういう謂われか。実に理解しがたいことにおれが電化製品を買うと周りから説教を受けるのですよ。
端的に言えば、「身分不相応」なんだそうである。君は文明の利器なんか使っちゃいけない。豚に真珠、俺に文明という理不尽な面責なんである。
それにしても、新ジャンルの電化製品を入手すると心が躍る。手に入れた直後が一番たのしい。未知との遭遇である。あなたの知らない世界である。
いくら眺め続けたところで、ファックスが届くはずもないので、友人の閑古鳥カメラ屋店主Hにテスト送信して貰うことにした。
と、いきなり来た。そうか、ファックスを使い慣れているHは操作が早いのかと、妙な感心をしつつうろたえる。まさかこんなにも早く送られてくるとは思わなかったので、何の準備もしていなかったのだ。インクガアリマセン。ヨーシヲセットシテクダサイ。次々、ファックスから警告音が発生する。
まさかこのチャンスを逃したら、もう二度と受信できないのではあるまいか、という懸念にかられ、慌ててインクを押し込むようにセットし、手元の紙をむしり取って挿入する。
ファックスヲジュシンチューデス。おお、やったじゃないか。成功である。
が、ファックスから吐き出される紙を見た瞬間、心臓が凍り付いた。用紙の向きを反対にしていたのだ。先ほど、俺が咄嗟に差し込んだ紙は仕事に使う大事な原稿なんである。
慌てて送信中止ボタンを探すが、そんなものは見あたらない。そうか、電源を引っこ抜けばいいのか、という発想に至った頃には既に遅く、ははは、紙はとっくに排出された後でありました。
俺の原稿をこんなもんで塗り潰すとは、どういう了見だ、ハシグチ!
立体造形が魅せるHカップ美乳のダイナマイトボディ全身ダッチワイフ「ぬがせっ娘」。あなたに抱きつく立体実用ポーズの等身大ダッチで、リアルなフェイスマスクで雰囲気抜群。2,940円。(本文より)
2009年11月13日 雑文 トラックバック:0 コメント:2
裏ヤバ系プチ遠征
友人で仕事仲間で元へらへら隊のI氏が平日の夕方にとつぜん押し掛けてくるやいなや、開放感に満ちあふれた顔で言ったのだ。
「暇になった。泊まりでどっか遠くに行こうや」
おれがサラリーマンだったらI氏を殴っているところだ。お互いカネなし保証なし自由アリの自営業でよかった。
とはいえ、いきなり身元不明となるのはまずい。徹夜で二日分の仕事を行い、失踪準備を整える。遊びが掛かっているとなると、ここまで集中力が発揮できるものか。
今夏は遠征スケジュールが絶望的だった。ところがI氏が唐突にポッカリと予定が開いた。遠征と言うほど大がかりなものは無理にしろ、ふいに沸いた機会を逃すわけにはいかないのである。
スケジュールの関係もあったので、深夜、I氏の車で出発することにした。目的地は未定。
「ところで奥さんには何と言って出てきたん?」
I氏に問うと、
「ちょっと隊長の所に行ってくる、と。それだけ」
新婚1年目でこの調子なのであった。
目的地については10分間ほどの話し合いを行い、大分県の裏耶馬溪に決まった。何があるというわけでもなく、フィーリングである。名前がいいじゃないか。裏耶馬溪。つまり裏ヤバ系だ。
お互いパソコン電磁波にさられされっぱなしの生活なので、「裏ヤバ系でイッパツ抜こうじゃないか!」と投合しつつ、車で高速をひた走り、深夜の大分市に着。
なにせ急な出発であったので、いつも以上に情報がなかった。仮眠はどこでとるべきか。ネットカフェなんぞは言語道断である。風呂には一応入りたい。道中やたらとラブホテルを見かけ、6軒目のラブホテルを通りがかったところで、お互い口を開いた。
「ネットカフェに行くよりは……」
パソコンとは何としてでも離れたい、という強いな気持ちが、悲壮な決意を固めつつあったのだが、結局ぼくたちは(中略)。了。
▲むき出しのコンクリートにくたびれた椅子が非常に良い感じの耶馬溪・村上食堂。
定食は「からあげ定食」のみという非常に硬派な店でしたぞ
▲からあげ定食700円。皮に染みこんだニンニク醤油が香ばしい。
食べ歩きする予定が、これだけで腹が膨れてしまい残念
▲耶馬渓谷。天然露天風呂にてこの景観を見ながら、満喫……
のつもりが、I氏が目の前に立ち尽くしたため、せっかくの風景がI氏のキンタマで台無し
2009年08月19日 紀行[国内] トラックバック:0 コメント:2
巌流島はどう?
あー、すっかりサボり癖がついてしまいました。更新が止まっており申し訳ないです。
19時間パソコンで商用文章を打ち続けてやっとこさ一段落。息抜きにまたパソコン、ではいささかキチガイじみており、ついつい机を離れてしまうのでありんす。

弁解以上。
最近のホットニュース。
・極貧時代に夢見た“オトナ買い”。積年の想いを実現させるべく、とりあえずは納豆16パック一気食いしてみた。もう納豆は嫌いだ。
・手持ちのバリカンに「髪すき」機能があることをいまさら発見。多毛なおれにはこれ幸いと早速使ったら、側・後頭部が部分的に“禿げた”。モヒカン頭、再来だぜ。
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某日午後。
友人であり、仕事仲間であり、へらへら隊隊員(元隊員か?)でもあるI氏と今夏遠征の打ち合わせをする。彼も仕事でパソコン漬けの生活を送っておるので、電磁波抜き休暇を共に希求しているのだ。
「巌流島なんかどう?」
郷ひろみよりも暑苦しい顔立ちで、爛々と目を輝かせるものだから余計に熱い。拙宅の気温が摂氏2度ほど上昇した。
I氏彼の提案はいつもながら唐突だ。
“ネタ”が絡まないと遠征は行く価値がない、との彼の信条は、互いの利害が一致するところである。
巌流島。おお、いいじゃないか。歴史に残る闘士たちが仕合を行った孤島である。巌流島で、アントニオ猪木とマサ斉藤が繰り広げた名勝負については常識ですね。
ところで巌流島に何があるのか。I氏に聞いてみると、予想通りの答えが返ってきた。
「なんも知らん。なんも分からん」
思いつき、なのである。
こんな遠征を企画するのは狂気の沙汰でしかないのだが、ガンリュウジマという響きにはいたく心を揺さぶられる。
早速、二人でいろいろと調べてみると、以下のことが分かった。
・実は、島の大部分が私有地である
・島内は禁煙である
・キャンプ場は当然無い
・宿泊は山口市の許可が必要
つまるところ、管理がガチガチに厳しいようなのだ。無許可で行けば、密航・不法侵入・軽犯罪法第1条(たき火)に抵触する恐れがある。
これでは仕方ない。ただの観光に行くしかあるまい。さらに船の最終便は5分程度しか上陸時間がないという。
これは参った。
さておき、スケジュールの都合上、船の最終便に乗るしかなく、上陸した途端に予期せぬ便意が発生し、便所を探しまわっていたら帰りの船に乗り遅れ、仕方なく島で野宿することとなり、夜づゆの寒さと空腹感に死の危険を感じ、たき火を焚いてもそれは不可抗力であり、きわめて自然の成り行きとおれは思うのであります。しかたないしかたない。
2009年07月31日 雑文 トラックバック:0 コメント:2
熊本の宿場街で山頭火に酒を貰った

歩いていたら、酒屋のおっさんに捕まった。おっさんは、私は酒屋のオヤジだけれども種田山頭火の生まれ変わりである、と名乗った。
「きちんやどってのはまきばやどだいがわりにおさめとったけんあぎゃんいいよらしますと」
(訳:木賃宿というのは、薪を宿代代わりに納めていたので、ああいう風に言うらしいです。)
そんなわけでおれは山頭火にタダ酒を飲ませてもらったのである。
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「国内で一番好きな場所は?」
と問われたら、日奈久である。知っている人はあまりおらんだろう。熊本県の八代海に面した旧宿場街だ。これまでに5度訪れた。最初に訪れたのは九州を徒歩縦断した時だ。
2001年前の7月だった。ひたすら暑かった。ひたすらきつかった。ひたすらに楽しかった。
真夏の炎天下、所持金10,000円だけを持ってサンダル履きでただただ南下するだけの旅程であった。
足はフラフラ、膝ガクガク、汗はダクダクで、体臭プンプンである。普段は公園の水道で風呂を済ませていた。
しかし、九州は温泉大国だ。それこそ車で行けば、10分おきに温泉地が飛び込んでくる土地もある。
霞む目の先に揺らめく「温泉あります」の看板は、重たい自炊道具を抱えたヨレヨレ貧乏旅行者にとっては、ひどく悩ましい存在である。温泉には入りたいものの、金がない。水泡のごとき次々とわいて出てくる温泉看板を、必死で脳内消去した。
熊本県八代市にある日奈久は100円で入れる温泉が二ヶ所あるらしい。事前に情報を知っていたおれは、落ち行く陽の光とともに日奈久に飛び込んだのだ。

それが初めての来訪だった。
猥雑とした軒並みの奥に踏み入れた途端、訳の分からぬ情感がどっとあふれてきた。悲しくもあり、怒りもある。心の底から湧き出してくる愛しさに溺れては、困惑した。それは結局「あ、ここなんかい良いな」に落ち着くのであるが、何で良いのかは全く分からんのである。
日奈久は一期栄華一杯酒を彷彿とさせる一大宿場街であった。
明らかに寂れきっている一方で、過去には栄えたであろうと感じさせる残骸があるのだ。残骸と言っても遺物じゃない。雰囲気が残骸を感じさせるのである。何とも説明しがたいが、それこそ空間が違うのだ。古い景観に何かしら栄華の残香がある。
それにあいまって日本田舎風土独特の哀愁が加わり、何とも言えない雰囲気を醸し出しているわけだ。これにやられてしまった。
訪れた当時は知らなかったが、実際、熊本藩・細川氏(細川護熙の祖先)の藩営温泉であったり、もっと昔は薩摩の豪族島津氏も立ち寄っていた歴史600年にも遡る湯治場らしい。最近の有名人では、種田山頭火がこよなく愛していたというのもおかしい。山頭火は100年前の人物である。

日奈久には、おれの祖母がいた。もっとも血の繋がっていない義理の祖母である。
徒歩旅行の際、ふらりと訪れたラーメン屋に彼女はいた。金がないことを察した彼女は、おれにたらふく飯を食わせてくれたあげく金を取らなかった。
あまりにも申し訳ないので、2度目の来訪時には金を持って入店したのだが、その時も金を取らなかった。
彼女とあまりにも親しげに話しているおれを見た常連客が、
「失礼ですが、どなたです?」と訝しげに聞いたことがある。
すると、彼女は間を入って即答したのだ。
「あたしの孫たい!」
以来、夏が訪れる度、極力、日奈久のラーメン屋に通った。行くたびにばあちゃんは赤字になる事になるのだけれども、実の孫に会えたように嬉しそうにするばあちゃんの笑顔を見ると、おれも嬉しくてたまらないのである。
そして、2年前の夏にばあちゃんは亡くなった。恩を返せず終いだったのが悔しい。

九州の浮浪者を統括するボスと出会ったのもこの地だ。日奈久駅で野宿していたところ、彼に声をかけられた。どういうわけかひどく気に入られ、息のかかった九州中の浮浪者におれの情報が伝達され、行く先々で浮浪者から歓待を受けた。
あのボスは今でも生きているんだろうか。浮浪者であることに誇りを持っていた彼は、住所不定無職であるからして今もどこかを彷徨っているのかもしれない。

今年のゴールデンウィークもやはり、日奈久を歩き回っていたのだが、酒屋のおっさんから声をかけられた。人がいなくて暇だから寄っていけ、というのだ。
茶と焼酎を馳走になり(とすらっと書けるのがいかにも日奈久である)、種田山頭火について話し込む。俳句の知識はないが、漂白の貧乏アル中詩人ということは知っていた。山頭火好きの酒屋のおっさんと話が合わないはずがないのである。

おっさんは、種田山頭火の生まれ変わりだ、と称しコスプレグッズをそろえ、日奈久観光会に協力しているという。なるほど、酒屋のあちこちには新聞・雑誌取材の切り抜きがあった。
「先月は石ちゃんが来たとです。あん人はほんなこつ良か人でした」
「石ちゃん?」
「あ、石塚さんですたい。あの肥えた人」
種田山頭火は石塚と風呂に入り、全国放送でオールヌードをさらけ出した、と嬉しそうに言った。
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日奈久の至る所には、前回の訪問時にはなかった山頭火の言詞があちこちに貼られていた。
私は所詮、乞食坊主以外の何物でもないことを再発見して、また旅へでました。歩けるだけ歩きます。行けるところまで行きます。温泉はよい。ほんたうによい。ここは山もよく海もよい。出来ることなら滞在したいのだが、いや一生動きたくないのだが乞食で怠け者で酒好きでヒモなのである。奔放な生き方そのままに、季語や音数に捕われない自由律俳句を詠んだ。
私的には最高の土地ですね。ほんとうにここは。(と、最低のオチで締めくくる)
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2009年06月01日 紀行[国内] トラックバック:0 コメント:1
ラスト・オブ・モヒカン

パソコンの整理をしていたら、こんな画像が出てきた。
縁のある方に地元のお菓子を贈ろうとネットで注文した際、ダメ元で“のし指定”を入力したところ、あっさり通過。そのまま配送されてしまったのだ。
何も問題なく郵送されたことも驚きだが、店舗スタッフも失笑しただろう。
「こんな馬鹿な客は前代未聞だ」
そんな想像をすると、喜びに身が震えます。某兄には大変失礼を致しました。
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某武道競技の審判員に選出されるハメとなった(団体名を上げるとバレるので伏せる)。殴りっこしてる方が100倍楽だ。
それにしても競技者への規定が非常に厳しい。特に服装。
・上着の袖をまくってはならない
・ズボンでかかとが隠れてはならない
・競技者は髪を清潔に保たねばならない
・鉢巻は認められない
・ヘアクリップ、ヘアピンは禁止
・競技者は爪を短くすること
・長髪禁止
・茶髪禁止
・タトゥー禁止
まるで校則のようだけど、スキンヘッドとかモヒカンとかヒゲは全く問題ないそうです。
当然、審判も競技者規定に準ずる必要があるわけで、まさか30歳過ぎてから服装の注意を受けるとは思いも寄らなかったのでありました。抜けたくなったら、タトゥー入れよう。
2009年05月23日 雑文 トラックバック:0 コメント:2