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熊本の宿場街で山頭火に酒を貰った

歩いていたら、酒屋のおっさんに捕まった。おっさんは、私は酒屋のオヤジだけれども種田山頭火の生まれ変わりである、と名乗った。
「きちんやどってのはまきばやどだいがわりにおさめとったけんあぎゃんいいよらしますと」
(訳:木賃宿というのは、薪を宿代代わりに納めていたので、ああいう風に言うらしいです。)
そんなわけでおれは山頭火にタダ酒を飲ませてもらったのである。
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「国内で一番好きな場所は?」
と問われたら、日奈久である。知っている人はあまりおらんだろう。熊本県の八代海に面した旧宿場街だ。これまでに5度訪れた。最初に訪れたのは九州を徒歩縦断した時だ。
2001年前の7月だった。ひたすら暑かった。ひたすらきつかった。ひたすらに楽しかった。
真夏の炎天下、所持金10,000円だけを持ってサンダル履きでただただ南下するだけの旅程であった。
足はフラフラ、膝ガクガク、汗はダクダクで、体臭プンプンである。普段は公園の水道で風呂を済ませていた。
しかし、九州は温泉大国だ。それこそ車で行けば、10分おきに温泉地が飛び込んでくる土地もある。
霞む目の先に揺らめく「温泉あります」の看板は、重たい自炊道具を抱えたヨレヨレ貧乏旅行者にとっては、ひどく悩ましい存在である。温泉には入りたいものの、金がない。水泡のごとき次々とわいて出てくる温泉看板を、必死で脳内消去した。
熊本県八代市にある日奈久は100円で入れる温泉が二ヶ所あるらしい。事前に情報を知っていたおれは、落ち行く陽の光とともに日奈久に飛び込んだのだ。

それが初めての来訪だった。
猥雑とした軒並みの奥に踏み入れた途端、訳の分からぬ情感がどっとあふれてきた。悲しくもあり、怒りもある。心の底から湧き出してくる愛しさに溺れては、困惑した。それは結局「あ、ここなんかい良いな」に落ち着くのであるが、何で良いのかは全く分からんのである。
日奈久は一期栄華一杯酒を彷彿とさせる一大宿場街であった。
明らかに寂れきっている一方で、過去には栄えたであろうと感じさせる残骸があるのだ。残骸と言っても遺物じゃない。雰囲気が残骸を感じさせるのである。何とも説明しがたいが、それこそ空間が違うのだ。古い景観に何かしら栄華の残香がある。
それにあいまって日本田舎風土独特の哀愁が加わり、何とも言えない雰囲気を醸し出しているわけだ。これにやられてしまった。
訪れた当時は知らなかったが、実際、熊本藩・細川氏(細川護熙の祖先)の藩営温泉であったり、もっと昔は薩摩の豪族島津氏も立ち寄っていた歴史600年にも遡る湯治場らしい。最近の有名人では、種田山頭火がこよなく愛していたというのもおかしい。山頭火は100年前の人物である。

日奈久には、おれの祖母がいた。もっとも血の繋がっていない義理の祖母である。
徒歩旅行の際、ふらりと訪れたラーメン屋に彼女はいた。金がないことを察した彼女は、おれにたらふく飯を食わせてくれたあげく金を取らなかった。
あまりにも申し訳ないので、2度目の来訪時には金を持って入店したのだが、その時も金を取らなかった。
彼女とあまりにも親しげに話しているおれを見た常連客が、
「失礼ですが、どなたです?」と訝しげに聞いたことがある。
すると、彼女は間を入って即答したのだ。
「あたしの孫たい!」
以来、夏が訪れる度、極力、日奈久のラーメン屋に通った。行くたびにばあちゃんは赤字になる事になるのだけれども、実の孫に会えたように嬉しそうにするばあちゃんの笑顔を見ると、おれも嬉しくてたまらないのである。
そして、2年前の夏にばあちゃんは亡くなった。恩を返せず終いだったのが悔しい。

九州の浮浪者を統括するボスと出会ったのもこの地だ。日奈久駅で野宿していたところ、彼に声をかけられた。どういうわけかひどく気に入られ、息のかかった九州中の浮浪者におれの情報が伝達され、行く先々で浮浪者から歓待を受けた。
あのボスは今でも生きているんだろうか。浮浪者であることに誇りを持っていた彼は、住所不定無職であるからして今もどこかを彷徨っているのかもしれない。

今年のゴールデンウィークもやはり、日奈久を歩き回っていたのだが、酒屋のおっさんから声をかけられた。人がいなくて暇だから寄っていけ、というのだ。
茶と焼酎を馳走になり(とすらっと書けるのがいかにも日奈久である)、種田山頭火について話し込む。俳句の知識はないが、漂白の貧乏アル中詩人ということは知っていた。山頭火好きの酒屋のおっさんと話が合わないはずがないのである。

おっさんは、種田山頭火の生まれ変わりだ、と称しコスプレグッズをそろえ、日奈久観光会に協力しているという。なるほど、酒屋のあちこちには新聞・雑誌取材の切り抜きがあった。
「先月は石ちゃんが来たとです。あん人はほんなこつ良か人でした」
「石ちゃん?」
「あ、石塚さんですたい。あの肥えた人」
種田山頭火は石塚と風呂に入り、全国放送でオールヌードをさらけ出した、と嬉しそうに言った。
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日奈久の至る所には、前回の訪問時にはなかった山頭火の言詞があちこちに貼られていた。
私は所詮、乞食坊主以外の何物でもないことを再発見して、また旅へでました。歩けるだけ歩きます。行けるところまで行きます。温泉はよい。ほんたうによい。ここは山もよく海もよい。出来ることなら滞在したいのだが、いや一生動きたくないのだが乞食で怠け者で酒好きでヒモなのである。奔放な生き方そのままに、季語や音数に捕われない自由律俳句を詠んだ。
私的には最高の土地ですね。ほんとうにここは。(と、最低のオチで締めくくる)
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2009年06月01日 紀行[国内] トラックバック:0 コメント:4
ラスト・オブ・モヒカン

パソコンの整理をしていたら、こんな画像が出てきた。
縁のある方に地元のお菓子を贈ろうとネットで注文した際、ダメ元で“のし指定”を入力したところ、あっさり通過。そのまま配送されてしまったのだ。
何も問題なく郵送されたことも驚きだが、店舗スタッフも失笑しただろう。
「こんな馬鹿な客は前代未聞だ」
そんな想像をすると、喜びに身が震えます。某兄には大変失礼を致しました。
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某武道競技の審判員に選出されるハメとなった(団体名を上げるとバレるので伏せる)。殴りっこしてる方が100倍楽だ。
それにしても競技者への規定が非常に厳しい。特に服装。
・上着の袖をまくってはならない
・ズボンでかかとが隠れてはならない
・競技者は髪を清潔に保たねばならない
・鉢巻は認められない
・ヘアクリップ、ヘアピンは禁止
・競技者は爪を短くすること
・長髪禁止
・茶髪禁止
・タトゥー禁止
まるで校則のようだけど、スキンヘッドとかモヒカンとかヒゲは全く問題ないそうです。
当然、審判も競技者規定に準ずる必要があるわけで、まさか30歳過ぎてから服装の注意を受けるとは思いも寄らなかったのでありました。抜けたくなったら、タトゥー入れよう。
2009年05月23日 雑文 トラックバック:0 コメント:2
100円分のプライド
駆け出しの頃は仕事を選ばず、何でも書いたり描いたりしたという「中島らも」や「西原理恵子」に見習って、仕事を取りまくっている。
目蓋ピクピク状態の眼精疲労と戦いつつ、机上にシケモクの山を貯めながら、せこせこと机に向かっているのだけれども、もはや潰しの効きにくい年齢となった。
龍ちゃんの「僕の将来に対する唯ぼんやりした不安」とか、たけちゃんの「得体の知れない焦燥感」とまでは大げさだが、なるほど仕事を取りまくってないと安心できないのである。
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かくして、先日は取引先との打ち合わせを行うため、バスに乗ったのだ。
と、乗車口からピョコリと吐き出される整理券をむしり取った途端、足下でチャリンと音がした。落ちていた硬貨を蹴っ飛ばしたのであった。
一瞬、拾おうか悩んでしまった。
ショックである。「拾うかどうか迷ったおれ」がショックなんである。
これは堕落以外のなにものでもない。なんと落ちぶれたか。咄嗟に我に返り、慌てて硬貨をネコババした。100円玉であった。去年においては一週間分の食費にあたる。
ここは迷わず1円だろうが5円だろうが、人がいまいが衆人環視だろうが、先に子供が発見しようが「おれの一週間の命を寄こせ」と血走った目で絶叫しつつ、硬貨を奪取し、勢い余った場合は前回り受け身をかました後、硬貨を握りしめた右手を高らかに掲げ、スーツの埃をクールに払いながら、颯爽と紳士的に席に座るべきだったのだ。
それが0.6秒ほど迷ってしまったんである。0.1秒の差が生死の分かれ目だ。堕落である。実に情けないんである。
今更、週100円食生活に戻るのは相当の勇気がいるのだけれども、20代の貧乏生活はおれにとっての矜持である。やはり今でも自分の時間を犠牲にして金を得るのは馬鹿らしいと思っているし、一分一秒は万金に値するのだ。
……と、思わずバスの中で思索にふけったのだけれども、100円玉で誇りとか実に馬鹿ですね、おれ。
でも仕事する暇があったら、酒飲んでる方がいい。仕事はもうちょい減らそう。
2009年05月14日 雑文 トラックバック:0 コメント:3
非任侠喧嘩仁義 頂上決戦1
この先どうなるか分かりませんが、不定期更新シリーズです。
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【あらすじ】
とある取引先が1年前より金を払ってくれず、不払い総額は発泡酒2500缶分。相手方はのらりくらりと逃げて、悠々自適の生活を満喫中。日常に刺激を求め、さあ、訴えてやる!
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そんなわけで、革ジャン+アメリカンバイク姿で裁判所へ突入。周囲はスーツ姿の人間ばっかりである。これでは、どこからどう見てもおれは「呼び出された被告」だ。
玄関に飾られている看板が何ともいかめしく、ちょいびびった。
まずは館内を物色。駐車場では桜が舞い散っているというのに、館内は真逆の暗い雰囲気である。警備員の視線が痛くなってきた。トイレに逃げ込もう。

脱糞後の記念撮影。
数々の被告が、来る判決結果におののきつつ、ウンコを排出したトイレであろう(多分)。ある者は痴漢えん罪に怯えつつ糞をひりだし、またある者は因果応報の巡りに改悛しつつ脱糞したのだ。大変、重みのある大便所である。
ちなみに裁判所内では一切の写真撮影が禁止されていた気がする。トイレぐらい撮影したっていいじゃないか。おれが許可する。
受付案内所へ。
受付にいるのは、絵に描いたような無愛想なおっさんだった。いかにも裁判所らしい。
民事訴訟の手続きを踏みたいんですが……と伝えたところ、おっさんは肘から先を45度ほど傾けて、前方を指さした。
「あっちの方」
いつか刺されるぞ、この野郎。オヤジにガンをつけながら、担当部署を捜索する。そうだ。ついでに告発しとこう。某地方裁判所の受付オヤジは態度を悔い改めろ。
勘で入った部屋で一応あっていたようである。
不況のせいかどうか知らぬが、受付待ちが大勢おり、10分ほど別部屋で待たされる。
出てきた担当者は、年配の女性であった。すると開口一番に
「私は手続き案内しか行いませんから。アナタを有利に運ばせるような質問の答えには一切応じません。分かりましたか?」
趣旨はもっともだが、もっと別の言い方あるだろう。思わずカチンとくる。訴訟準備は腹立ってばっかりだ。
かくして事務的かつ淡々と、書類説明等が行われ、とりあえず第一段階は終了する。これから訴訟にあたっての書類準備や証拠集め等を行われなればならぬものの、これがまた面倒臭そうで気持ちが萎えしまう。
不払い分をまとめて請求……と簡単に済むわけでなく、不払い案件ごとにひとつひとつ立証証拠を作らねばならないらしいのだ。今回は併せて60案件近くあるので泣きたくなる。
また、被告は個人財産を持っていることは確実なのだけれど、訴える対象は個人ではなく、あくまで会社だ。つまり被告の会社に財産がなければ、支払い能力なし、ということになってしまう。被告の会社は休業状態にあるので、どうにも困った事態だ。
今後もぼちぼちと進めていきたいと思います。
2009年03月31日 雑文 トラックバック:0 コメント:0
一発の銃弾が

携帯電話の新規契約を行ったところ、「現金つかみ取り」キャンペーン中とのこと。たいへん恐縮である、手がでかいので。
自分でも驚くほどがっぽり取れてしまい、総数114枚。あっさりと最高記録を叩き出した。
3名いた店員はそろってすごくいやな顔をしておりました。
キャンペーンはなくなり次第おしまい、だそうだ。
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1万人の群衆の中に一発の銃弾を撃ち込んでみよう。
すると、その弾に間違いなく当たってしまうのがおれである(でも、しぶとく生き残る)。行く先々では「待ってました」とばかりに大寒害、大洪水、クーデータ、果ては核戦争危機が勃発するのだ。相当数、おれのせいで死んでると思う。
不運の固まりだが、悪運だけは強い。周りとしてはこれほどの迷惑はないわけで生命保険の勧誘はどこもあっさり引き下がる。
それでも、人の輪だけには恵まれているのはありがたい。本日、高校時代の友人の紹介で、某IT企業と業務提携を行った。友人そっちのけで話をスムーズに進めていたところ、友人がポツリと一言。
「おまえ、すごいなぁ。すごいよぉ」
なんか知らんが尊敬されてしまった。さてはバリバリ仕事が出来る人間と思われたか。と、ひっそり喜悦していたところ、
「いやいや、普通の会話も出来る人だったんや。気に入らなかったら無言で殴った上に、モンゴル馬で市中を引き回すんじゃないかと心配してた」
また、きたか。それはただの立派なキチガイでありましょうよ。
友人はこのブログの存在を知らぬので、誤解を招く要因はないはずだし、そもそも高校で一番親しい奴であった。つまるところ、昔から奇人変人の認定を受けていたと言うことか。
そういえば、先日、16歳時の「適正・性格診断テスト」結果資料が、唐突に出てきたのですね。受けた記憶すらなかったので、内容を見てびっくりした。

「安定志向」が最低で「冒険志向」が最上級。趣味や理想しか追わない。「実務」が苦手で「体力」だけ。
何ひとつ成長していませんな。立派な社会人不適格者である。でも、こんなおれが好き。
2009年03月05日 雑文 トラックバック:0 コメント:2