日常のアレコレとほとばしる熱いソウルを慎ましやかに垂れ流す
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会社では絶賛窓際族として君臨、新規の仕事がやってくると、伊賀の忍びも瞠目(どうもく)するほどの素早い動きで気配霧消、上司が
「遊ポさん、仕事……」 と振り向けば、へのへのもへじ顔の案山子(かかし)が立っている! 的くの一(いち)戦法で日々、のらりくらりと暮らしております。ええ、私は元気です。 もう半年くらい前の話ですけど、会社で健康診断がありました。 それに先だって、 「レントゲンの邪魔になるから、飾りのある服は着てこないように」 という回覧が回ってきたのですが、これ、何をトチ狂ったのか「白いTシャツでなければならない」と解釈した馬鹿がおりまして。ええ、私ですけど。 健康診断の日は白いTシャツ! と念仏のように心に唱え、いざ当日。あんだけ「白いTシャツ」と唱え倒しておったというのに、朝、家を出る直前まで肝心の「今日が健康診断」ということをすっかり失念。靴を履きながら「あ!」と慌て、とにかく洗って置いてあったTシャツをひっ掴んで家を出たですよ。 で、健康診断の時間直前にトイレへ行き、Tシャツに生着替え。 長い髪をばさりとかきあげ、その日着ていたカットソーを脱ぎ、白いTシャツをふわっとかぶったその一秒後──。 ──かつて、私がこれほどまでに真剣な、真摯な姿勢で問いを投げたことがあっただろうか。 ──かつて世界は、これほどまでに切実で深刻な問いを受けたことがあっただろうか。 私は神に語りかけた。 その瞬間、まさにこの世には、神と私の二者しかいなかった。 私の内に満ちる、しんとした空気。清冽で静謐、粛然として厳(おごそ)かな。 静かに、静かに私は神に語りかけた。 神よ。おお、神よ。 ……袖はどこですか? と。 ──そう。Tシャツには袖がなかった。 ランニングシャツでも、ノースリーブでもない。 ただ、袖がなかった。肩だけがわずかにある、ただのIシャツ。 ……神よ! これはもしかして、同居人(彼氏・33歳・加齢臭確認済)のものではないですか!! 神は慈愛に満ちた微笑を浮かべ、艶然と答えられる。 「ププ(笑)」 ……神よぉぉぉぉ!!! 名古屋市某区にある某企業の某4階にある某女子トイレから、魂の叫びがこだまする。 彼女は泣く。慟哭する。嗚咽を漏らし、声の限り、涙の限り泣き吼(ほ)える。 「もう、健康診断始まっちゃうんですけどぉぉーーーー!!!」 その日幸運だったのは、たまたま彼女がざっくりとした網目の夏用カーディガンを羽織ってきていたことだ。 彼女は慌ててそれを羽織り、6階にある医務室へと急ぐ。受付を済ませる。 カーディガンといっても、網目がざくざくと荒いのがウリのそれだ。両手を組んでさりげなく隠そうとしても、「あ、こいつ袖がない」というのは一目瞭然。そんな最中、受付の保健士(結構いい年だが化粧がギャルギャルしい女子・推定39歳)の 「えー、昨夜ビール飲んだのぉ? 前日の飲酒は駄目ってアナウンスしたよねー? あ、忘れてた? で、どれくらい飲んだの? 缶ビール3本!? 毎日そんなに飲むの? へーえ! すごいねー! もしかしたら結果に出るかもだけど、まぁ、自業自得ってことで」 という大声に、否が応にも衆人環視の只中に。だって今日が健康診断って忘れてたんだって! 仕方ないじゃん! ……見るな! 袖のない私を見るな! だが伏目がちに検尿カップをもらった彼女は、少しだけ目線を上げて室内を見渡し、すぐさま愕然とする。血液検査、聴音検査、内診、診問、隣の部屋では視力検査にメタボ測定、あちらこちらに群がる他社員の姿、姿、姿。 誰 も T シ ャ ツ 着 て ね ぇ 。 あ゛――――――!!! あらん限りの声をあげて心の中で地団駄を踏む。 あたしの馬鹿ああああああ! と叫ぶと同時に、検尿カップを持ったまま4階のロッカーへロケットスタート。 あたしの馬鹿―――!!! で、結局当初着ていた無地のカットソーに着替え、そのままトイレへ。もう、これでもか、これでもか、と尿をくれてやったのはいうまでもない(あらオゲフィン)。 ……というしょーもない話。 |
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太陽が眩しかったから、という理由で人を殺しちゃうのはカミュ著「異邦人」の我らがムルソー君ですが(こんな書き出しの日記、昔も書いた記憶があるけどまぁいいや)、その日、私が枕を洗う、という愚挙に出たのもやはり、太陽が眩しかったからに他ならない。
そう。 私は枕を洗った。 洗ってみた。 これでもかと。 泡にまみれろと。 揉まれてみろと。 敵はかれこれ二十年、私の下で寝続けた(うっふん♪)相方である。来る日も来る日も私の下で、私に組みしだかれ、私の頭を抱き、くんずほぐれつ私のうなじを撫で続けた、もう糟糠の妻とも呼べる羽枕。長年に渡る睦み合いで、彼女の嵩は約半分。私の汗と夜用美容液と垢(きゃー)と涙(あら(ハート))をじっくり吸い込み、しっぽりしんぼり、くったくたのヨレヨレ状態に、さすがの私も心を痛めた。 言うなれば、今まで仕事仕事で妻を顧みなかった夫がある日、妻の疲れ果てた手のシワを見て 「たまには……エステでも行ってきたらどうだ。お洒落して、友達とご飯にいってきてもいい。……俺のことは気にするな。たまに自分で作るのもいいものさ。悟(息子・架空)と二人でキッチンに入るのも悪くはない」 と新聞から目を離さずに呟く感じである。 で、我が家のドラム式洗濯機は回った。回りすぎるほどに回転した。 回転して回転して、 やがて、 「ドッタン! ドッタン!」 という聞きなれない音を出した。 慌てたのは夫である私である。 「!?」 コンマ2秒の音速ダッシュで洗面所へ向かう。果たしてそこには、水を存分に吸い込んで見るからに重そうな妻(枕)が「脱水」のところで悪戦苦闘。彼女はその身をドラム内で叩きつけられ、必死の形相で悲鳴をあげていたのだ。 「聡子!(妻=枕・仮名)」 「ドッタン! ドッタン!」 我が家の高性能なドラム式洗濯機が音にあわせて大きく震える。震える。震える。ずれる。 ……ずれる!? そう。洗濯機は聡子の遠心力に耐え切れず、聡子を振り回しながらもその力で位置をずらしている。 「さ、悟! か、母さんが!」 必死で息子(架空)の名を呼ぶも、そもそもそんな人物は架空なのでいるはずもない。全身の力を込めて洗濯機を押さえにかかるが、もう、洗濯機はそれどころじゃない。隣の壁にまでずれていき、ドッタンドッタン、壁にその身を打ち付けている。 こ、壊れる! うちの高級電化製品が! あたし今買い替えるような貯金ない! ぎゃー!! 慌てて電源をオフ、洗濯機の中で息も絶え絶えになっている聡子を抱き起こした私は、……腰をはずしかけた。 お、重い……。 水をたっぷり吸い込んだ我妻は、もう身体の隅々にまでそれを行き渡らせ、もうこの世の水を全部吸い込んでやった! みたいなふうで喜色満面。聡子……お前、リアルに石並み。お、お、重い……! 十分に脱水されていない聡子はぼたぼたと水を垂らし、見るみるうちに洗面所の床に粗相。ついにボケたか聡子!! 私の高級な洗面所が! 彼女をバルコニーへと運ぶため、力を込めて彼女を抱く。同時にやっぱり腰が抜けそうになって、これはイカンと、改めて彼女を肩に担ぐ。 米俵をかつぐ三河屋のごとく聡子を肩に乗せて廊下を疾走、リビングを抜けてバルコニーに彼女を横たえた私が、激しく息を弾ませながら腰をさすり、頭上にさんさんとはびこる太陽を忌々しく睨みつけたのは言うまでもない。 それから一ヶ月。 聡子、まだ乾いてません。 さっき久しぶりに聡子に面会に行ったら、表面に黒く細かい転々が無数に浮いていました。 ……これって、カビ……? 聡子……。 |
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サゴシが旨い。
出会いは社員食堂のA定食だったんですけど、これがもう。 特にマヨネーズ焼き。最高。 毎日マヨネーズを持ってサゴシの尻を追いかけまわしておる今日この頃です。 超旨い。今までお前の存在無視してて、超ごめん! しかも、日常の中で会話に困ると、「サゴシが美味しくてさー」とか使える。ヤバい。優秀。 かつ、「お前の食い物の好みなんてどうでもいいよ……」と、相手の眉間にシワまで発生させられる。アツい。超激アツ。 その上「マヨネーズはカロリー高いよ? 痩せないよ?」とか返されようもんなら、「別にあたし今の自分好きだし」とか言っちゃって、さらに相手をイライラさせちゃえる! なにこれ! ……友達どんどん減ってくじゃん! こうして気づいたら周りにはサゴシしかいなくなるじゃん! ……ま、独り占めできるからいっか! ははは! で、この前「サゴシやばい、超やばい」とうわ言のようにぶつぶつ唱えていたら、「サゴシって?」との質問頂戴! はい喜んで!(古いとか言うな) で、はたと悩んだ。 サゴシ……って、なに? ……サゴシって、どこで生まれたの? どこで育ったの? あたし、彼のこと何にも知らない! だって目が合った途端に電流がビビビってなって、それからは二人で将来のこと(いつか塩焼きにするからね、とか、ゆくゆくはお上品なお出汁で炊きたいなぁ、とか)ばかり話して……。 そういう時彼があたしに向けるグレイの、ちょっと焦げ目の入ったグレイの皮を、もう、ぎゅっとしたくて堪らなくなって……、それで結局皮ごと丸っと食べちゃの! もう二回くらいしか噛まないの! 喉ごしすっきり! サゴシーーー!! また明日も食べるからねーーー!! で、「白くてあっさりしてて……鰆(さわら)に似た奴……ゴニョゴニョ」ってな感じでのらりくらりとかわし続けておったのですが、つい昨日! ようやく調べた! ネットって便利! なんだよー、鰆に似てる似てると思ってたら、やっぱり鰆じゃんかよー。なんだよー。「サゴシ」って人に言うのがちょっと「ツウな魚知ってる風」で気に入ってたのに。しかも鰆のマヨネーズ焼きが旨いのはだいぶ前から知ってたよ!! 正確に言うと鰆ってやつは出世魚で、鰆の一〜二回り位小さい奴をサゴシと呼ぶということらしいです。ジャニーズでいうジュニア、大沢たかおでいう森山未来、自動車でいう軽自動車です。あれ、変なの混じった。 とまぁ、なんか無駄にマヨネーズばかり消費した二週間。でもまた明日も食うんだけどね。 ところで、日本郵政のイメージキャラ「ポポック」が可愛い。超可愛い。 「ゆるキャラがブームですが」なんてワイドショーとかで言っているのを聞くと、鼻くその一つや二つ、勢いよく飛ばしてやりたくなるダークなところが魅力のわたしですが、もう、もう、もう、ポポックだけは可愛い。腰砕ける。サゴシと同じくらい。 今日も郵便局でもらったポポックのシールを眺めて、勤務中一人でニヤニヤしました。 ……うん。そんな感じの毎日でお給料もらってます。 |
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かつてFanks(TMネットワークのファンはそう命名されていた。否が応にも)のひとりであったわたしにとって、こんなにショッキングな事件があろうか。言わずもがな。小室先生の逮捕の件である。
思えば学生時代。 世の中のちょっと音楽をわかってる風な仲間達はすでに洋楽とか渋谷系とかに猛ダッシュ、ジャニーズlove派は「かぁくんが」「平家派が」みたいな有様で仲間には入れてもらえず、一転アニヲタ軍団はといえば「トルーパーが」「聖矢が」的状況で、我が愛国邦楽団といえば、Wink派、チーム工藤静香、小泉キョンキョン応援団……かと思えば、嘉門達夫が替え歌を歌っている! 声高らかと! みたい感じで群雄割拠。なんかよくわからんが、とりあえず肩身の狭かった思い出だけはある。 だから小室先生がtrfで大成功をなすったときには拳を振り上げ、涙を流し、「我が人生に、いっぺんの悔いなーし!」と大手を振って大いに叫んだものである。 フリッパーズギターファンから「小沢くんの叔父さんは超有名な指揮者」とか、チェッカーズファンから「フミヤの芸術は、フミアート」とどれだけ自慢されようが、「うちの先生は、3歳のときからヴァイオリン……」と目の端に涙を溜めて耐えたりしたのだ。 その先生が! 逮捕! 今となっては、薄っぺらいだの、何も残らなかっただの、散々言われ放題の敗軍の将。でも当時、あの音に、あの歌詞に熱くなったこともある。 それまで抽象的で普遍的で、どこか小奇麗な額縁に入れるみたいにして飾られつくした「女の子の想い」みたいなところを、いち早くリアルに、ありふれた言葉で、ありふれた事象を引き合いに出して、ここ(現実)まで引き降ろしたのは、(メジャーという場では)小室先生の功績ではないだろうか……といったら言い過ぎだろうか(……言い過ぎか……)。 それでもちっぽけなことを大げさに捉えて、それを肥大化させて自分を追い込んでゆく的な、 「強いわたし、弱いわたし、でもどっちも本当のわたし!」的な、 本当にうんざりするほど「女のコ女のコ」したヒロイスティックな歌詞展開は、今ではいろんなアーティストがごく当たり前の手法として使うけれど、当時はそれなりに新鮮だったような気がする。 新しい手法も、目新しい表現も、十分に広がって世の中に馴染んだら、もう、それでその役目を終えるんだ。 誰かは、ただ時代を読むのが巧かったひょろひょろの色白マンが、金を稼いでそれ以上に浪費して、それで終わった話だよと言うだろう。 そうなんだろうなぁ、と今、しみじみと思ったりもする。 それだけでも、多分、ないと思ったりもする。 ちなみにわたしが一番好きなのは、楽曲では渡辺美里の「Teenage walk」と「悲しいね」。さっぱり十年以上忘れきっていた楽曲だったのに、逮捕と聞いて、しみじみして、それから改めて聴きたくなったのがこれだった。 楽曲だけじゃなくて、その時代の空気とかも交えるのなら、華原朋美の「keep yourself alive」。ぴこぴこと新しげなリズムに耳障りのいい歌詞を乗せて、なんとなく近未来な代物という、まぁ実に小室先生らしい曲なんだけれど、その歌詞にある「法律も規則も名誉も何でも 若さに勝てない」という一文にズッキューンだった。 たまにこういうところがあるから、先生からは目が離せなかったな。 ……そんな回顧録。 |



